研究概要 |
Fe-Mn-Si合金を発展させ,強磁性の特性を付加した強磁性形状記憶合金Fe-Cr-Co-Ni-Si-Mn合金を開発した。本合金はアンチフェロのFe-Mn-Si合金に強磁性元素(Co, Ni)と耐腐食性のためにCrを加えたもので,構成要素が多く各要素の特性に及ぼす影響の検討が十分とはいえなかった。そこで強磁性元素(Co, Ni)の効果を明らかにするために,Fe-Cr-Co-Si-Mn合金とFe-Cr-Ni-Si-Mn合金での特性解明を行った。 元来の強磁性型形状記憶合金Fe62-Cr13-Co10-Ni7-Si6-Mn2[Wt%]においてCr13-Si6[Wt%]を固定し,さらにCoを7[Wt%]に固定したものと,同様にしてNiを7[Wt%]に固定した合金を作成し,CoとNiによってどのような違いが現れるかを検討した。その結果Coを添加した試料の方がNiを添加した試料に比べ全体的に飽和磁化Msの値が高く,逆にNiを添加した試料の方が形状記憶効果SMEの値が高いことが分かった。このことからCoは主に飽和磁化の上昇に大きく影響していることが分かった。また、逆にNiはCoに比べて飽和磁化の値には影響しないが、形状記憶効果を高めることに大きく影響していることを明らかにした。 これまで,Fe-Si-Mn合金は薄板化が困難であったが,低Mn領域において液体急冷法によりリボンの作成に成功した。液体急冷法で作成したリボンにおいても銅系やNi-Ti合金と同様に高い形状記憶効果を示すことが分かった。Mnが14[Wt%]を超える高Mn領域においては液体急冷法によるリボンの作成が困難であったが、わずかにBを添加し,SiとCrの割合を調整することによりリボンが作成できることが分かった。Fe-Mn-Si-B合金においてMnが24[Wt%]を超えるような高Mn領域において高い形状記憶効果を示すが,高Mn領域での強磁性化は難しいことを明らかにした。
|