研究概要 |
高MnのFe-Mn-Si合金は良好な形状記憶効果を示すが非磁性であり,また薄帯化が困難であった。耐食性を高めるためCrを10[Wt%]添加し,0.2[Wt%]のBを添加することによって超急冷での薄帯化に成功した。強磁性の機能を新たに付加するために,本年度は特に希土類元素の添加を次の5つのシリーズについて検討し,飽和磁化Ms[emu/g]と形状記憶効果SME(%)の測定を行った。1(Fe_<1-X-Y>-Nd_X-Si_Y)_<63.8>-Cr_<10>-Mn_<26>-B_<0.2>[Wt],2(Fe_<1-X-Y>-Sm_X-Si_Y)_<63.8>-Cr_<10>-Mn_<26>-B_<0.2>[Wt%],3(Fe_<1-X-Y>-Dy_X-Si_Y)_<63.8>-Cr_<10>-Mn_<26>-B_<0.2>[Wt%],4(Fe_<1-X-Y>-Ho_X-Si_Y)_<63.8>-Cr_<10>-Mn_<26>-B_<0.2>[Wt%],5(Fe_<1-X-Y>-Gd_X-Si_Y)_<63.8>-Cr_<10>-Mn_<26>-B_<0.2>[Wt%] SMEの測定として,記憶処理せずに300℃一定のマッフル炉で10秒間の回復処理を行ったもの,直線に拘束して1000℃のマッフル炉に入れ40秒間保持し急冷記憶した後300℃一定のマッフル炉で10秒間の回復処理を行ったものの2通りで測定を行った。また,Msの測定は記憶処理前のもの,1000℃で40秒間保持しその後水中急冷したもので行った。測定の結果,ほとんどの作成試料について熱処理前では飽和磁化の値が高く,僅かな希土類元素の添加により強磁性化が可能であることが分かった。1000℃で40秒間加熱し急冷により記憶処理を施すことによって飽和磁化の値が減少することがわかった。NdやSmを添加した試料においては添加する量によって飽和磁化の減少が押えられる傾向が見られ,Ndを0.7[Wt%]およびSmを1[Wt%]添加した試料において,SMEの値が100[%]を示しながらも飽和磁化の値が70[emu/g]前後を示す強磁性形状記憶合金の開発に成功した。 この2つの試料に対して記憶処理温度と時間の最適化を行い,Ndを0.7[Wt%]添加した試料では970℃で30秒保持した後急冷する条件においてSMEが100[%]でMsが67.9233[emu/g]となることを明らかにした。また,Smを1[Wt%]添加した試料では910℃で40秒保持の条件においてSMEが100[%]でMsは87.8909[emu/g]という高値が得られた。
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