研究概要 |
本研究は,Bio-MEMSマイクロアクチュエータ用基盤材料の創製を目的とし,生体適合性を有する新たな3元素ペロブスカイト型結晶構造持つ圧電材料の創製技術開発を行い,以下に示すように分子力学計算に基づく分子材料設計およびヘリコン波プラズマスパッタリングによる圧電薄膜の創製に関する成果を挙げることができた. 1.第一原理分子力学計算による生体適合3元素圧電材料の設計技術の開発 動特性・発生力で優位性を示すペロブスカイト型結晶構造を持つ新規圧電弾性材料を,(1)タンパクを構成するアミノ酸およびDNAを構成するGuanineとの相互作用性を評価する手法であるHSAB則により生体適合元素の探索を行った.(2)トレランスファクターを用いた幾何学的手法により,3元素分子構造解析を行い候補原子の決定を行った.(3)第一原理に基づく分子力学解析により候補材料のペロブスカイト型結晶構造安定性の評価および圧電特性の推定を行った.候補材料であるMgSiO_3について密度汎関数法を用いたポテンシャルエネルギー評価を実施し,安定構造を特定した.さらに,立方晶状態から自発分極状態へのポテンシャルエネルギー変化を調査し,候補材料MgSiO_3が正方晶自発分極状態で最も安定となり,圧電特性を発現し得ると結論付けた.さらに,電子密度分布に基づいて双極子モーメントなどの基本物性を定量的に明らかにした. 2.ヘリコン波スパッタ成膜法による生体合圧電材料薄膜MSiO_3の創製 分子力学計算に基づいて設計された生体適合圧電材料MgSiO_3を本申請により購入したヘリコン波スパッタ装置により創製する手法の検討を行った.本装置の動作環境は10^<-4>Paと高真空下であるため,構成元素組成に敏感な生体適合圧電材料薄膜に汚染物が混入することなく薄膜を創製することが可能である.また,ペロブスカイト構造を作製するために"as deposited"で基板を高温に保つことが可能である.創製条件探索では,Ar : O_2(流量比),Siの面積割合,基板温度,成膜中全圧力,RF電力を条件因子とし,実験計画法により,結晶構造,結晶粒系および表面粗さを評価値とする寄与率を求めることで最適創製条件を見出し,圧電特性の発現可能性を確認した.
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