研究概要 |
高靭性・高疲労強度バルク金属ガラス開発用に,詳細を検討して仕様を決め,液体急冷バルク金属ガラス作製装置を購入した.本装置は,3つの炉かなる.1つはガラス合金の母合金を作製するためのアーク溶解炉(3000℃,1x10^<-3>Pa),1つは母合金からガラス合金リボンおよびバルク素材を作製するための高周波溶解炉(1600℃,1x10^<-3>Pa),1つはこれらを熱処理する真空熱処理炉(800℃,1x10^<-3>Pa)である.納品後,諸々の点検を行った後,母合金の作製,リボンとバルクの作製,およびそれらの熱処理を試み,走査型電子顕微鏡(SEM)とX線回折装置を用いてガラス合金が作製できていることを確認した. まずZr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5 at %からなるガラス合金を圧搾鍛造法でナノ結晶(結晶粒径約3nm,結晶粒間距離約10nm)が一様に分散析出した板材を作成し,引張試験と疲労試験を実施した.引張強さは1.7GPa,ヤング率は87GPaであり,報告されている同組成の単相ガラス合金の値とほぼ同じであった.疲労限度は,報告されている同組成の単相バルク合金の値と比べて約3倍大きくなり(疲労限度は引張強さの約15%),これは,ナノサイズの結晶がすべりの発生を抑えるためと考えられた. 現在,上記とほぼ同組成にAgまたはTaを微量加えて異なる大きさの結晶が析出したガラス合金の作製に取組んでいる.また,今後本研究を行っていく際の疲労強度に関する参考指針とするべく,単相の薄膜アモルファス合金とバルクガラス合金,およびFe系とAl系結晶合金における疲労限度を応力比別に文献調査し,比較検討資料を作製した.
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