研究概要 |
圧搾鍛造法で粒径約3nmのナノ結晶がガラス相中に一様に分散したZr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5 at%バルク金属ガラス(BMG),および銅鋳型鋳造法で粒径約4nmのナノ結晶がガラス相中に一様に分散したCu_<60>Zr_<30>Ti_<10> at% BMGを作製し,片振り疲労寿命試験を実施した.その結果,疲労限度(応力半振幅)は,Zr基BMGにおいては引張強さ(1.7GPa)の約15%となり,これは同組成の単相BMG合金の値と比べて約3倍大きくなった.Cu基BMGにおいては引張強さ(2.0GPa)の24%と大きな値を示し,実用上十分な疲労限度を有することが分かった.ナノ結晶分散BMGの疲労限度の大幅な上昇は,ナノサイズの結晶がすべりの発生と成長を妨げたためと考えられた. 傾角鋳造法でアモルファス度が高いと見られるZr_<55>Cu_<40>Ni_5 at% BMGを作製し,破壊靭性試験を実施した.その結果,破壊靭性値は53MPa・m^<1/2>と大きな値を示した.これより,Zr基BMGはガラス単相と見られる場合において実用上十分な破壊靭性を有していることが分かった.ナノ結晶が分散析出しているZr_<55>Cu_<30>Al_<10>Ni_5 at% BMGおよび同組成の結晶化がほぼ完了したBMGの破壊靭性値は最大でそれぞれ40,11MPa・m^<1/2>となった.これは結晶化による脆化のためと考えられる.また水焼入法で作製したPd_<40>Cu_<30>Ni_<10>P_<20> at%単相BMGは疲労き裂が入らず,切欠き破壊靭性値は36MPa・m^<1/2>で,き裂が複数同時に進展し,推定破壊靭性値は12MPa・m^<1/2>と低かった.
|