研究概要 |
地球環境を保全し,生産活動の持続的な発展を維持するため,切削加工の分野においては,ミニマムクーラント(MQL)切削加工技術の確立が急務である.しかしMQL切削加工技術の大きな問題は,加工条件や被削材によりその効果が大幅に変わることであり,このことがMQL切削加工への転換を遅らせている.特に高付加価値を生む難削材の切削に対しては,安定した冷却・潤滑効果をMQLによって得ることが極めて難しいとされている.そこで切削のCAE技術を利用してMQL加工の効果を評価し,また超音波振動切削と併用することにより,最終的にMQL難削材加工技術を開拓することを目的として本研究を実施した. 本年度は,MQL超音波振動併用切削加工装置の開発,切削状態の監視,ならびに,オイルミストの流れ解析の3点に関する研究を行った.先ずMQL超音波振動併用切削加工装置は,購入備品の超音波による振動切削装置とXYステージ,既存のオイルミスト供給装置とエアコンプレッサ,さらには,圧力計や流量計などを組み合わせて作成した.被削材は典型的な難削材といわれるインコネル718とチタン合金Ti-6Al-4Vである.次にMQL超音波振動併用切削における切削状態,冷却・潤滑状態を切削温度により監視するため,従来から開発を進めてきた温度センサー内蔵型工具についてさらに研究を進め,フォトリソグラフィとスパッタを用いて,より信頼性の高い工具を開発した.最後に,オイルミストの流れ解析については,汎用有限要素解析ソフトANSYS/FLOATRANを用い,今年度は,突っ切りを想定した場合の解析を行い,微小油滴の切削点への供給状態を評価した.またオイルミストの供給方法の違いについて実験と解析の両者より検討を行った.実験結果は,工具摩耗と仕上げ面粗さにより評価した.
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