研究概要 |
体内に装填されるインプラントには,生体への適合性の高いチタン材(純チタン,チタン合金)が多用されている.このような材質面に加えて,微細凹凸すなわちマイクロテクスチャといった表面の性状によっても,生体適合性が左右されることが、最近の研究で明らかにされつつある. そこで本研究では,個体差に応じた寸法や3次元形状のチタン材表面に対し.グルービング加工,フライカッティングおよびローリング加工により,深さやピッチがサブミクロン〜ミクロンレベルのマイクロテクスチャの形成の可能性について基礎実験を行った.その結果,1)個々のマイクロツールを弾性ヒンジ支持したマイクロヒンジアレイ構造のツーリング機構を開発し,グルービング加工およびローリング加工に適用したところ,3D形状への倣い加工が容易で,能率的な形成が可能になること,これに対し,フライカッティングでは,工具・工作物間に複雑かつ超精密な相対制御が要求され,単純形状の工作物面へのマイクロテクスチャ形成に制限されること,2)グルービング加工では,ダイヤモンド工具すくい面へのチタンの拡散による溶着が顕著で,工具形状のテクスチャ形状への転写精度が劣化すること.これに対しフライカッティングでは,溶着を相対的に少なくできるものの,溝肩部には切り屑生成メカニズムに起因してバリが発生〔対溝幅比<5%〕し転写精度の劣化を来すこと.また工具・工作物間の相対速度のないローリング加工においても,工具へのチタンの溶着が無視し得ないこと,3)このチタン溶着は,極低温(<-120℃)の不活性ガス雰囲気中では抑制効果が大きいこと.また工作物表面に極薄の酸化皮膜を形成すること,4)発生したバリの近傍では,加工ひずみが大きく,このためバリ部を選択的にエッチングすることが可能で,ほぼ実用レベルにまでバリ除去が可能であること、などを明らかにした.
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