研究概要 |
1.トランジスタスイッチング式の放電電源を備えたワイヤ放電加工機を試作した.市販のワイヤ放電加工機とは異なり時間幅が長く,電流ピーク値の低い放電パルスを発生させることから,電極消耗の抑制が期待できる.また,ワイヤ電極に融点の高いモリブデンを用い,ワイヤ走行速度を市販のワイヤ放電加工機の20倍程度となる最高10m/sとした.以上のことから,ワイヤ電極へのダメージを少なくすることが可能となった.よって,ワイヤ電極は設定量一方向に走行させた後,同一長さ反転させて繰り返し使用する機構とした. 2.試作したワイヤ放電加工機により単結晶シリコンインゴットの放電スライシングを行い,詳細に検討したところ,以下のような所見が得られた. (1)ワイヤ速度を大きくすると加工速度は大きくなるが,テンションの変動も大きくなる. (2)パルス幅が長いほうが工作物厚さによって加工速度の減少する割合は小さい. (3)逆極性加工より正極性加工のほうが加工速度は大きい. (4)電流値が小さくパルス幅の大きい条件では,工作物厚さの大きい場合に切断加工が困難となる. (5)電流波形による特性から,パルス幅の小さいほうが加工面粗さは小さい. (6)正極性加工と逆極性加工の加工面粗さの差はほとんどない. (7)正極性加工より逆極性加工のほうが加工面に生じるクラックは小さく,コンタミネーションも小さい. (8)ワイヤ電極の損傷は正極性加工のほうが小さく,断線も少ないため長時間の加工に適する. (9)本スライシング法においては,マルチワイヤソーと同等の加工精度を得ることが可能である.
|