本研究はガラス、セラミックスに代表される硬脆材料をその機能を損なうことなく高能率の機械加工を実現するための基礎研究であり、この損傷の原因となる脆性亀裂の発生進展の抑制・制御方法とその実用化に関するものである。まずガラスを対象に延性モード切削時の力学的状態をFEMシミュレーションにより検討し、硬脆材料でも微細切削厚さで流れ型切りくずが生じる無損傷機械加工が実現しその力学的状況は延性材料のものと同等であることが判明した。ついでガラスの切削時に脆性破壊から延性モード切削に移行する過程を検討するため確率的破壊条件を導入したFEMシミュレーションモデルを構築し、切削厚さの変化により脆性亀裂の発生状況とその推移が変化し損傷状態が異なる様子、損傷の発生しない延性モード切削の実現条件を求めた。さらに硬脆材料の多くはイオン結合または共有結合であり表面エネルギーは環境によって容易に変化する事実を踏まえて環境が機械加工に及ぼす影響について定量的に検討し、加工油剤中の特定のイオンの存在により破壊強度が大きく変化すること、これらのイオンは機械加工時には、仕上げ面は悪化するものの強度低下は小、逆に仕上げは良好なるものの強度低下が大とするもがあること、この原因は容易に亀裂を生じるや否かであり、亀裂発生の制御因子である表面エネルギーの大小に左右されることが判明した。また硬脆材料の表面の破壊特性を制御することを検討し、特定のイオンを吸着させることで表面の破壊靱性を変化させることが可能なことを見出し(特許申請中)、さらに電場付与によりこの効果を推進させることが可能なことを見出した。最後にこれらの成果を基にガラス表面に微細加工を行うためのマイクロ、ナノ加工機を試作し、無欠陥機械加工を実行した。
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