研究概要 |
本研究では,今後の磁気ディスク装置の高密度化に必要となるコンタクト記録方式実現に最も大きな問題となる磁気ヘッドの摩耗を,磁気ディスク保護膜の改良により低減することを目的としている。初年度はカーボン膜成膜時のスパッタガス圧を高めて軟質化することで,摺動子摩耗を低減できることを明らかにした。昨年度は,「保護膜の形状の改良によるヘッド摩耗の低減」が可能かどうかを確認するため小試験片を作成し,原子間力顕微鏡による形状観察で狙いに近い形状形成の可能性を得た。しかし,この方法は再現性が低いことを明らかにした。また,表面形状の均一性が向上のためのディスク表面の平坦化を検討しヘッド摩耗低減の可能性を明らかにした。 本年度は,昨年度課題として残った「再現性のある保護膜表面形状形成」の可能な成膜方法を新たに探索し,ある程度再現性のある方法を見いだした。そこで,その成膜法の条件を変えたディスク試料を作成しピン・オン・ディスク型摩耗試験により実ディスク装置に近い条件でその効果を測定した。その結果,この保護膜形状により,摺動子に働く摩擦力が減少すること,および摺動子の摩耗も減少することを確認した。一方,ヘッド・ディスク間隔低減のための方法として昨年度の方法に加え,球面摺動子によるバニッシュ法を検討しこちらの方法でも条件をさらに改良することにより効率的に摩耗低減が可能とできることを明らかにした。成膜条件をさらに詳細に改良することにより,将来のコンタクト記録方式実現のための磁気ディスク保護膜を開発できる見通しを得た。
|