研究概要 |
転がり軸受が高速・高荷重で運転されると,軸受温度が上昇し,軸受面での摩擦・摩耗が増大するとともに,焼付やフレーキングなど致命的損傷の発生割合も多くなる.また,高速玉軸受では,特に低荷重の場合,玉の異常滑りによるスッキディングが発生するが,さらに潤滑油不足条件では,スミアリングやボール・エクスカーションによる保持器の損傷も大きな問題となる.こうした転がり軸受の各種損傷,特に超高速玉軸受で問題となる発熱や焼付き現象を解明するためには,玉の三次元運動の把握が必要不可欠である. 本研究では,実機への適用を視野に入れ,超高速玉軸受における玉の三次元的な運動挙動を,磁化玉と静止斜交座標軸上に配置した高感度ホール素子を用いて精度よく計測できる手法を確立する.また,この手法を用いて合成荷重下で運転される高速玉軸受の玉の三次元運動状態を測定・解析するとともに,EHL油膜形成状態や温度上昇,摩擦・摩耗状態や焼付,はく離の発生,軸受振動など転がり軸受の運転性能との関係を究明する.本年度は,前年度の成果を踏まえ,高速で回転している磁化玉の運動を高感度ホール素子により計測し,素子の特性を評価した.また,軸回転速度:〜50000rpmでの高速運転条件下においても安定して測定データが得られるよう,テレメータセンサーを使用した計測システムを構築し,その有用性について確認した.さらに,荷重条件,回転速度などの運転条件の違いによる転動体の三次元運動挙動がEHL油膜形成状態や軸受の温度上昇,摩擦トルク,軸受振動など軸受の運転性能とどのように関連しているかを調査した.特に,電気抵抗法による油膜形成状態の同時計測を行い,高速運転条件下での玉の運動挙動の影響など相互の関連を重点的に究明した.なお,同様の計測方法をボールねじに適用し,玉の運動挙動とEHL油膜形成状態との関係を明らかにした.
|