研究概要 |
転がり軸受が高速・高荷重で運転されると,軸受温度が上昇し,焼付やフレーキングなど致命的損傷の発生割合も多くなる.また,高速玉軸受では,特に低荷重の場合、玉の異常滑りによるスッキディングが発生するが,さらに潤滑油不足条件では,スミアリングやボール・エクスカーションによる保持器の損傷も大きな問題となる.こうした転がり軸受の各種損傷,特に超高速玉軸受で問題となる発熱や焼付き現象を解明するためには,玉の運動拳動の把握が必要不可欠である.本研究では,実機への適用を視野に入れ,超高速玉軸受における玉の三次元的な運動挙動を,磁化玉と静止斜交座標軸上に配置した高感度ホール素子を用いて精度よく計測できる手法を確立する.また,この手法を用いて合成荷重下で運転される高速玉軸受の玉の運動状態を測定・解析するとともに,EHL油膜形成状態や温度上昇など転がり軸受の運転性能との関係について検討した.その結果,次のような知見を得た. (1)静止斜交座標系での計測により玉の三次元運動が十分捕えられ,玉の自転速度や公転速度は,従来の回転直交座標系での計測結果とほぼ一致し,本計測法の妥当性が裏付けられた. (2)特に軽荷重・高速回転の場合,玉の自転速度の著しい低下が計測され,玉の自転滑り発生が確認された. (3)合成荷重条件下におけるアンギュラ玉軸受の玉の運動挙動は,アキシアル荷重により大きな影響を受けるが,この傾向は,主軸回転速度の増加により顕著となることがわかった. なお,本研究で開発した計測手法をボールねじに応用し,玉の運動挙動とEHL油膜形成状態および運転性能の関連を明らかにした.
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