研究概要 |
本研究は,平成14年度から平成16年度まの3年間にわたり,上記研究課題について取り組むものである.とくに,メタノールと水蒸気に対して,これまで精密な実験的研究がほとんど不可能であった平衡に十分に近い状態(弱い非平衡状態)を含む広範囲の気液非平衡状態下での実験を実行すること,さらに,分子気体力学と分子動力学のシミュレーションを併用して相変化現象への分子論的理解を得ることを目的としている. 平成14年度の研究成果は以下のように要約される. 1.実験装置と計測法の改良,およびデータ処理技術を進展させたことによって,研究代表者がこれまで行なってきた実験と比べて,かなり気液平衡状態に近い条件下でメタノールの凝縮の精密な実験を行なうことができた.この結果,気液平衡状態に近づくにつれて,メタノール蒸気の凝縮係数が1に近づくことが明らかになった.凝縮係数のこのようなふるまいは,これまでに全く知られていなかったものである. 2.メタノール蒸気の衝撃波管内における凝縮の実験を正確に再現する分子気体力学シミュレーションを行なった.このシミュレーションにおいては,メタノールのような多原子分子気体のふるまいを記述できる多原子分子版のGaussian-BGKモデルを用いた計算を行い,現象を正しく説明できる結果を得た. 3.分子気体力学よりさらに微視的な視点から蒸発・凝縮現象を解明するために,分子動力学シミュレーションを行なった.平成14年度は,単原子気体であるアルゴン蒸気の凝縮を分子動力学法で計算することにより,相変化の基本的な性質を微視的に明らかにした.このシミュレーションによって,アルゴンの凝縮係数を求め,その温度依存性を明らかにした.
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