研究概要 |
フロロカーボン(CF_4)プラズマの理論的研究に先だち,同じ電気的負性ガスである塩素(Cl_2)プラズマの研究を進めた.この理由は,より簡単な電子衝突断面積を持つCl_2プラズマの構造を詳しく調べることによって,CF_4プラズマの特性をかなり把握できると考えたことによる.Cl_2プラズマの研究では,これまで注目されて来なかったプラズマ反応器内のラジカルの希薄流とプラズマ生成過程の相互依存性を本格的に考慮した解析に成功した.流れ解析にはDSMC法を用い,プラズマ解析にはPIC/MC法を用い,この二つの解法を交互に繰り返すことにより,流れとプラズマの解を互いに矛盾のない形で収束させた. 解析には,(i)Cl_2の反応器への導入と中性ガス(Cl_2,Cl,SiCl_4)の排気,(ii)電子衝突によるCl_2,Clの励起と電離,(iii)Clのチャンバー壁での再結合(2Cl→Cl_2),(iv)シースによる荷電粒子の反射と吸収,(v)ウエハ上でのエッチング反応(4Cl+Si→SiCl_4),を考慮した。SiCl_4は反応生成物である.本解析の唯一の問題点は,(iv)のシースのモデル化である.これについては更に今後研究を進めて行く. 得られた結果を要約する.ガスの全圧が0.5〜2Pa,プラズマへの投入電力が500〜800Wの誘導結合プラズマ反応器の場合である. 1.アンテナ附近ではCl_2の解離は著しく,Clの数密度はガスの全密度の約80%に達する. 2.Cl_2,Cl,SiCl_4はそれぞれ独立に流れを形成する.これは希薄流に特有の現象である. 3.Clの壁での再結合はエッチング速度に大きな影響を与える. 4.Clの数密度は,ガス圧の上昇あるいはアンテナ電流の増加とともに増大する. 5.どのガス圧においても,電子密度は投入電力とともに増大する. 6.電力一定の条件下では,ガス圧の低下とともに電子密度は増大する.
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