研究概要 |
まずフロロカーボンとして電子衝突断面積が知られているCF_4をとり挙げ,直径390mm,高さ220mmの円筒状プラズマ反応器内の電磁場解析を行なった.電磁場は直径260mmの一巻きアンテナによって誘起されるとした.誘導電磁場の方程式は差分化し,差分式をADI法を用いて解いた.壁でのシースはすべてシースモデルを用いて簡単化した.プラズマ電流には,冷たいプラズマ近似による表現を用いた.解析から,(1)パワー吸収の大きな領城はアンテナ直下に限られる,(2)パワー吸収はアンテナの電流振幅に比例する,ことが分った.ただし結論の(2)は,導電率の式の中の電子密度として実測値を用いて得られたものである. ついで,与えられた電磁場下での電子運動を計算し,これから反応器内における電子温度,電子密度,イオンの生成速度の空間分布を明らかにした.この結果,(3)正イオンの生成速度は負イオンの生成速度より約1桁大きいこと,(2)CF_3^+の生成速度が最大であること,を明らかにした. ついで放電ガスを塩素とし,誘導結合プラズマとガス流れの連成解析を行なった.すなわち,荷電粒子の運動はプラズマ中の電磁場に依存し,荷電粒子の衝突は原料ガスと中性ラジカルの数密度場に依存する.一方,電磁場方程式中の電荷密度と電流密度は,全荷電粒子の位置と速度によって決まる.さらに,ガス流れは電子衝突のうちの電離による中性種の消滅,解離によるラジカルの発生の影響を受ける.これらの複雑な連成をすべて考慮した解析法を開発した.この結果は,学術誌Thin Solid Filmsにまもなく掲載される. 以上の研究の唯一の問題点は,シースをモデル化したことである.この点を改善すべく,PIC法によって求めた空間電荷密度を用いてポアソン方程式を解き,この電位分布から壁附近の電場を正確に求める方法を,目下,研究している.
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