マイクロPIVによる微小流路内電気浸透流の可視化計測技術の開発

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14350089
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 大島 まり 東京大学, 生産技術研究所, 助教授 (40242127)
• 研究分担者: 佐賀 徹雄 東京大学, 生産技術研究所, 助手 (30013220) ; 谷口 伸行 東京大学, 情報基盤センター, 助教授 (10217135) ; 小林 敏雄 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (50013206)
• キーワード: マイクロPIV / 電気浸透流 / ゼータ電位 / 電気泳動 / マイクロチャネル / PDMS / マイクロ生化学システム

研究概要

一般にマイクロ生化学システムでは電気浸透流を用いている。電気浸透流は流体操作が容易である一方、複雑な流動現象であり、未知の部分が多い。そこで、本研究では電気浸透流の物理現象を解明するために、微小空間スケールにおける計測技術の開発を目的としている。具体的な手法としては、画像計測法として確立されているPIV(Particle Image Velocimetry)をマイクロスケールの流れに適用したマイクロPIVの開発を行っている。
本年度は、マイクロ生化学システムで実際に用いられているPDMS(Polydimethylsiloxane)-glass hybrid microchip上のマイクロチャネル内流れの計測を行った。チャネル幅は200μm-30μmである。マイクロPIVの実験装置を構築する際には、PDMS-glass hybrid microchipに適したトレーサ粒子の選択および光学・顕微鏡レンズ系を用いることが重要であり、一般にマイクロPIVには蛍光粒子がトレーサ粒子として使われる。
チャネル壁やトレーサ粒子にはそれぞれにゼータ電位と呼ばれる固体表面の電気的状態を示すパラメータがあり、それにより電気泳動や電気浸透流などの流動現象に変化が生ずる。本研究ではゼータ電位計を用いてチャネル壁とトレーサのゼータ電位を測定し、その結果から見積もられる電気泳動速度を求めた。
本年度はマイクロPIVシステムを構築し、マイクロPIVを用いてマイクロチャネル内電気浸透流のPIV計測を行った。以下にその結論を示す。
1.マイクロチャネル内を流れる電気浸透流は一様な速度分布を持つ
2.表面電位がニュートラルで電気浸透流が発生しないと考えられていたPDMSチャネルでも電気浸透流が発生する
3.チャネルおよび付加するトレーサ粒子の組合せにより、ゼータ電位の違いが生じ,電気浸透流は変化する

研究成果

• [文献書誌] Marie Oshima: "Application of PIV Technique to Microflow"可視化情報. 22・1. 19-20 (2002)
• [文献書誌] Haruyuki Kinoshita: "Micro PIV Measurement for Electroosmotic Flow"Proceedings of 10th International Symposium on Flow Visualization. (CD-ROM). F0315 (2002)
• [文献書誌] Haruyuki Kinoshita: "Micro PIV Measurement of Electroosmotic Flow"Proceedings of the Micro TAS2002 Symposium. 1. 374-376 (2002)
• [文献書誌] Haruyuki Kinoshita: "Micro PIV Measurement of Microchannel Flow"Proceedings of Japan-Korea Joint PIV Seminar. 143-149 (2002)
• [文献書誌] Haruyuki Kinoshita: "PlV Measurement of Pressure-and Electrokinetically-driven Flow in Microchannels"Proceedings of SPIE-Beijing 2002. (CD-ROM). (2002)
• [文献書誌] 木下 晴之: "PIVによるマイクロチャネル内電気浸透流の可視化計測-マイクロPIVシステムの応用-"可視化情報学会第30回可視化情報シンポジウム講演論文集. 22・1. 167-170 (2002)
• [文献書誌] Ryo Torii: "Numerical Simulation of Fluid-Structure Interaction of the Intracranial Artery"The 4th World Congress on Biomechanics. No.760 F0264 (2002)
• [文献書誌] Masamichi Oishi: "PIV and LDV Measurement of Blood Flow in the Modeled Artery"Proceedings of 10th International Symposium on Flow Visualization. (CD-ROM). F0319 (2002)
• [文献書誌] 長野 京平: "数値解析による中大脳動脈内の血行力学に関する検討"日本機械学会第14回バイオエンジニアリング講演会講演論文集. 285-286 (2002)
• [文献書誌] 大石 正道: "PIVによる血管モデル内の可視化計測"日本機械学会第14回バイオエンジニアリング講演会講演論文集. 493-496 (2002)
• [文献書誌] 大石 正道: "血管の曲がりによる流れの不安定性の可視化計測"可視化情報学会誌第30回可視化情報シンポジウム講演論文集. 22・1. 493-496 (2002)
• [文献書誌] 大石 正道: "PIV-LDVを用いた血管モデル内の2次流れによる振動の計測"日本機械学会第13回バイオエンジニアリング学術講演会・秋季セミナー講演論文集. 65-66 (2002)
• [文献書誌] Marie Oshima: "Biosimulation and Visualization : Effects of the Cerebrovascular geometr on Hemodynamics"International Symposium on Visualization and Imaging in Transport Phenomena 2001. (2002)
• [文献書誌] Marie Oshima: "Finite Element Simulation and Experimental Measuremetns of Blood Flow in the Cerebral Artery"The 5th World Congress on Computational Mechanics. 91 (2002)
• [文献書誌] Marie Oshima: "Numerical Simulation and Database System for Hemodynamic Study of Cerebral Arteries"4th World Congress of Biomechanics. (2002)
• [文献書誌] Marie Oshima: "Image-Based Modeling and Simulation for Intracranial Aneurysms"13th Conference of European Society of Biomechanics. 505-506 (2002)
• [文献書誌] Marie Oshima: "Numerical Analysis of thermal Flow in the Cavernous Sinus"The Fifth JSME-KSME Fluids Engineering Conference. (2002)
• [文献書誌] Kiyoshi Takagi: "Application of finite element method to study hemodynamics in the cerebral aneurysms from medical imaging data"The 5th World Congress on Computational Mechanics (WCCM V). (2002)
• [文献書誌] 坂井 洋志: "内頸動脈モデル内の2次流れによる振動挙動の検証"日本機械学会第13回バイオエンジニアリング学術講演会・秋季セミナー講演論文集. 67-68 (2002)
• [文献書誌] 篠崎 賢太: "多変量解析による脳血管形状の血行力学に与える影響の検討"日本機械学会2002年度年次大会講演論文集. Vol.IV. 89-90 (2002)
• [文献書誌] 一條 裕紀子: "血管形状の脳動脈の血行力学に与える影響の考察"日本機械学会第15回計算力学講演会講演論文集. 2・2. 23-24 (2002)