研究概要 |
本年度は,微小流路内速度計測ツールであるマイクロPIVシステムを改良し,さらにその性能の評価を行うため,マイクロチャネル流れ等の単純な形状の流路内流れから,複雑流路内流れ,微小液滴内流れまで様々なマイクロ流れを計測してきた.前年度において,マイクロ流体デバイスの微小流路内流れ(特に電気浸透流)の計測を行うためのツールとして,マイクロPIVシステムの開発を行った.本年度はマイクロPIVシステムをより汎用的なシステムへ向上させるために, (1)顕微鏡光学系の改良, (2)高出力レーザによる落射照明系の組み込み, (3)効率的なステージ移動機構の導入 を行った.その結果,従来のPIV同様のフレームストラドリング手法による画像取得および相互相関法を用いたPIV解析が可能となり,より広範囲のレイノルズ数の流れを効率的に計測できるように改善された.その応用として,微小円柱や微小角柱(大きさ200μm)周りの流れのPIV計測を行った.最大でRe=10までのマイクロチャネル流れを可視化・計測することに成功した. マイクロチャネル流れの計測を通して,本研究で開発・構築したマイクロPIVシステムの評価を行った結果,性能として以下のことが明らかになった. (1)計測領域は510μm x410μm, (2)計測速度の面内解像度は12.8μm, (3)計測速度の深さ方向解像度(計測深度)は17.8μm, (4)計測可能レイノルズ数範囲は〜数10である. ゼータ電位計で利用されている矩形閉流路内の電気浸透流の理論式(森・岡本の式)を用いて,電生浸透流をPIVで計測するためには,微小矩形流路内の任意断面での速度分布を測定しなければならない.本システムは,電気浸透流計測のツールとしては,計測深度が大きいという問題点もあることが分かった.計測深度については今後さらに改善が必要である.
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