沸騰水型原子炉の熱工学的な設計上の制約は燃料棒支持用スペーサ近傍での熱除去によることが、実規模実験より確認されている。しかしスペーサ近傍の冷却材(水)の挙動と加熱管がバーンアウトへ至る機構は明確ではない。このような現状をふまえ、本研究ではスペーサ近傍における液膜の消失およびバーンアウトへ至る機構を実験的に明らかにすることを目的とした。本研究で得られたおもな知見は以下の通りである。 1.スペーサ近傍で発生するバーンアウト発生のトリガとなるドライアウトの発生は、じょう乱波間隔が大きくなった場合にじょう乱波間の基底液膜部の蒸発により発生すること、スペーサ下流側では、じょう乱波の到達とともに液膜が再付着しやすく、バーンアウトは全く発生しないことがわかった。特にドライアウト発生にはじょう乱波が支配的役割を果たすことを明らかにした。 2.じょう乱波により変動するスペーサ部の差圧を測定し、以下の重要な結果を得た。すなわちスペーサ上流側は、一旦ドライアウトが発生すると液膜が再付着しにくいため、バーンアウトが発生しやすく、その反対にスペーサ内部ではドライアウトが発生しても、じょう乱波の通過により液膜が付着しやすいため、バーンアウトの発生確率は低い、などである。また時々刻々のドライアウト発生を説明するには、二相流に特有の『非定常性』を考慮する必要があること、などを明らかにした。 3.供試部に2個のスペーサを挿入し、上流側のスペーサが下流側スペーサ近傍の液膜厚さやドライアウト発生に与える影響を調査した結果から、スペーサ間隔が狭いほど限界熱流速が高く、バーンアウトしにくいこと、スペーサはじょう乱波流れの液膜厚さを平均化し、スペーサ下流側での液膜が厚くなり、ドライアウトは発生しにくくなること、スペーサ間隔に関わらずバーンアウト発生確率の高い箇所は、下流側スペーサの上流付近であること、を明らかにした。 4.以上の結果を矛盾なく説明し、二相流の非定常性を十分考慮したバーンアウト発生機構を説明する流動モデルを提案した。このモデルではじょう乱波が重要な役割を果たし、バーンアウトはじょう乱波に挟まれた基底液膜部で生じる。
|