固体高分子型燃料電池内のガス流動状態や生成水挙動および低温下での生成水の凍結挙動の把握を目的として、セパレータの薄型化による性能影響、氷点下における電池性能、および加圧による無加湿運転の可能性に関して研究を行った。 まず、セパレータの薄型化による性能影響、氷点下における電池性能、および加圧による無加湿運転の可能性に関して研究を行った。その結果、電流密度が高いほど凍結による性能低下が急激に生じ、それを回避し得る限界の電流密度を雰囲気温度に対して示すことができた。また、加圧条件下では凝縮水がより多く生成するために、0.2A/cm^2の電流密度まで無加湿運転領域を拡大し得ることが明らかとなった。ただし、氷点下では加圧すると凝縮水の凍結がより顕著に生じるので、氷点下では常圧運転とするのが好ましいことも併せて明らかにすることができた。次にセパレータ内の可視化実験装置の製作を行い、凝縮水の挙動や電池内温度分布の直接計測を試みた。実験装置は可視化する側の端板に窓材を挿入し、セパレータ内部の可視化が可能な構造とした。実験の結果、凝縮水が流路内で次第に生成・蓄積された後、流出してセパレータ流路が開放されるパターンが繰り返し生じている様子が観察された。また、凝縮水に占有された流路面積の解析から、セパレータ流路内の凝縮水と電池電圧には明らかな相関があることが確認された。一方、反応面の2次元温度分布計測の結果、電池性能を確保する上で部材締め付け圧力の均一化が極めて重要であるが、適正な状態では比較的均一な面内温度分布になることが明らかとなった。さらに、凍結による電圧低下後の拡散層気相側表面には目視による変化は確認されなかったが、サーモグラフィーにより内部状態変化をモニターし得る可能性があるものと思われた。 以上、本研究により、燃料電池内部の現象を直接可視化観察することに成功し、凝縮水挙動をはじめ、熱・物質・電流移動の相互バランス関係について新しい知見を得ることができた。
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