研究概要 |
固体表面間の接触熱抵抗は,工業装置の熱設計・安全管理の重要なファクターの一つになる.接触熱抵抗の物理を熱物性論と波動論に基づいて系統的に解明する基礎研究を進めると同時に,接触熱抵抗の経時変化をその場的・インプロセス的に診断する手法を併せて研究することが緊要である.本研究では,このような立場からつぎの3種の研究を行ってきた. 第1に,接触熱抵抗を外部からその場診断するための手法を検討した.接触面の微視形状は接触する表面への印加圧力と結晶組織の変形に応じて経時変化するため,その研究では,接触状態の推定法の開発が重要になるが,本研究では,そのための手法として超音波探傷法の応用を考え,金属・金属接触面における超音波反射とその面をよぎる熱通過を測定するマクロ基礎実験を企画し,その研究のための実験装置を準備した.第2に,超音波の媒質界面における反射・透過特性を波動論的に調べた.すなわち,超音波・弾性波のパルス・波束の伝搬・減衰,境界面反射・透過,干渉現象を波動論的に記述し反転解析する解析システムを整備し,平滑面・規則的にあらい表面における超音波の反射・透過特性に関する基礎実験を行って,その解析システムの健全性を確認した.第3に,接触熱抵抗のミクロ機構を解明するために,分子動力学による計算研究を行った.すなわち,接触熱抵抗は,MEMS系を構成する2種の均質な結晶原子層の界面でも起こるが,その機構を調べるために,原子層をよぎる弾性波の伝搬を計算してウェーブレット解析し,弾性波の伝搬が界面で妨げられる現象を弾性波の振動数の関数として明らかにする方向をとっている.
|