研究概要 |
固体表面間の接触熱抵抗は,工業装置の熱設計・安全管理の重要なファクターの1つである.接触熱抵抗現象を熱物性論・波動論に基づいて系統的に解明する基礎研究を進めると同時に,接触熱抵抗の経時変化をその場/インプロセス的に非接触的に診断する手法をあせて研究することが緊要である.平成14〜15年度において,このような立場から次の2種の研究を行った: 第1に,接触熱抵抗を外部からその場・非接触診断するための手法を検討する実験研究を行った.接触面の微視形状は接触する表面への印加圧力と結晶組織の変形に応じて経時変化するため,接触状態の推定法の開発が重要になる.そのための手法として超音波探傷法の応用を考えた.金属・金属接触面[(黄銅・SKD61工具鋼)接触面]の真実接触面積,その接触面における超音波反射・透過とその接触面をよぎる熱通過を測定するマクロ基礎実験を行った.印加荷重をパラメータとして,(超音波反射率・超音波透過率)-(接触熱抵抗/接触熱コンダクタンス)-(真実接触面積)の3種の物理量の関係を定量的に明らかにし,超音波診断の可能性を示唆した. 第2に,接触熱抵抗のミクロ機構を解明するために,分子動力学による計算研究を行った.MEMS系を構成する2種の均質な結晶原子層の界面で起こる接触熱抵抗は界面熱抵抗と呼ばれるが,その詳細な機構を調べるため,粒子質量の異なるモデル結晶の理想界面や,シリコン・シリコン酸化膜界面をよぎる弾性波の減衰伝搬を分子動力学法により計算した.ウェーブレット変換による新しい格子振動解析方法を開発し,弾性波の伝搬が界面で妨げられる現象や振動寿命を振動数の関数として求められることを示した.得られた振動状態密度・伝搬速度・振動寿命から界面熱抵抗を推算した.
|