研究概要 |
SiO2粒子を分散させた懸濁液を,矩形容器(高さ150mm,幅40mm)内に封入し,容器の向かい合う垂直面をそれぞれ加熱・冷却したときの自然対流に対して熱伝達率の測定を行った.この測定を壁面温度差や粒子の初期濃度,粒子径を変化させて行い,熱伝達に及ぼす諸因子について考察した.本実験では分散媒を水とし,粒子径3及び6μmで粒度分布が小さな球形のSiO2粒子2種類を1,5,10wt%で混合させた.また,壁面温度差は1.5〜14.9Kで変化させた. その結果,全ての条件において濃度境界が最上部から徐々に沈降することにより上下2つの循環流が形成された.この濃度境界が沈降することにより,熱伝達率が変化する現象が得られた.対流が十分に発達した熱伝達率は,濃度境界の沈降と共に減少する.濃度境界が上部から中間に存在している間に熱伝達率の極小値が現れ,その後徐々に回復する.温度差が小さいほど,濃度が高いほど,粒子径が大きいほど熱伝達の減少率は大きい.これは,粒子の沈降現象が対流を抑制しているためと推測される.この熱伝達率(ヌセルト数)をレイリー数や粒子沈降速度との関係について整理した. この実験結果について,独立した単層を並列させることで得られる独立層熱伝達と比較した.つまりこの値は,実際の現象の層境界での熱の移動,粒子沈降による影響,境界の形状や厚みなどの影響を排除したものである.その結果,実験結果は全ての条件で独立層熱伝達より低い値となったものの,低濃度,講温度差,小粒径の場合はこの独立層熱伝達から系全体の値を予測することが可能であることが分かった.
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