研究概要 |
本研究は,近接場光を用いたナノスケール熱物性計測法を確立することを最終目的としている.平成15年度は,前年度に構築したナノスケール温度変化測定法を利用し,試料を近接場光によって周期的に加熱し,熱物性情報を含んだ近接場信号を得ることを目的としている.研究成果として以下に挙げる具体的な成果を得ることができた. 1,空気ばね式除振装置ならびにPID制御システムの構築を行った.本システムによって,近接場領域の走査に際して±20nmの安定性を実現した.これにより,安定して近接場光を励起・検知することが可能となった. 2,周期的に変調された近接場光を励起するシステムを構築した.本システムにより,最大で100MHzまでの加熱光強度変調が可能となり,ナノメートルサイズの試料を近接場光によって周期的に加熱することが可能となった. 3,微弱な近接場信号の中から熱物性情報のみを抽出する新しい理論を提案した.提案したプローブ励振法により、高感度に近接場光を検出することが可能となり,100nmの空間分解能を達成した. 4,厚さ125nmのAl薄膜ならびに単層カーボンナノチューブの測定を行った.得られた近接場信号は,明らかにナノスケールの結晶構造を反映した結果であり,ナノメートルオーダーの非常に高い空間分解能で熱物性情報を光学的に抽出することに初めて成功した. 以上得られた知見より,近接場光を用いてナノスケール熱物性計測が十分可能であることが明らかとなった.
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