研究概要 |
微量サンプルの拡散係数の測定が可能な光学的測定法の開発のための研究を行った.装置開発の目標は測定試料の量が5ml程度であっても拡散係数の測定を可能とし,かつ,タンパク質などの拡散係数の小さな物質でも短時間に拡散係数を測定することである. 平成14年度は装置全体の設計・製作を行い,これを用いて原理確認等の一連の実験を行った.まず,濃度分布形成法として,レーザー干渉縞の照射によって試料に温度分布を形成し,ソーレー効果によって溶質を駆動する現象を応用した.レーザー干渉縞により濃度分布は空間的に正弦波状となり,微量サンプルの測定の際に問題となる試料容器の有限性の問題を回避することが可能となった.また,拡散は正弦波状の縞の間隙で起こるため,その空間的スケールが微細であり,短時間の測定が可能となった.濃度変化の検出には光ヘテロダイン干渉計を構築した.その検出部を差動式にすることによって干渉計の振動による位相ノイズを大幅に減らすことが可能であることを明らかにした. 装置構成の原理の確認や校正などの予備的実験の試料として,ポリスチレン酢酸エチル溶液の拡散係数の測定を行った.その結果,加熱用のレーザーの干渉縞間隔はより狭い条件で測定を行うべきであることを明らかにした.また,加熱用レーザー強度,加熱用レーザービーム径,試料サイズ,測定位置などの検討を行い,解析的に最適値を明らかにした. 検出部の移動による試料の2次元スキャニングが可能な装置を構築した.予備的実験として可逆ゲルのゾルゲル転移の2次元密度分布スキャニングを行い,相転移過程での密度分布の変化を捉えることが可能であることを明らかにした.
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