研究概要 |
本研究は,1軸レベルのトルクセンサを配置した非直線弾性棒の先端を被検査物体に沿ってなぞるときに発生するスパイク信号から被検査物体の形状変化の微分情報を取得し,結果的にエッジ情報を取得しようとしている.この場合,被検査物体の表面形状がセンシングラインに対して傾いて置かれていると,なぞり動作中,トルクセンサ出力がだんだん大きくなり,逆に入力信号が大きくなるとだんだん小さくなる.やがてAD変換器の最大許容入力を超え,いわゆる入力信号の飽和が起こる.さらに信号が小さくなり過ぎると,分解能が著しく低下する.いずれもセンサとしての正常な機能を妨げる.この問題を避けるために,本年度は,過大信号入力に対してゲインを下げて入力飽和を防止し,過小入力に対して逆にゲインを上げて分解能の低下を防ぐようなゲイン自動可変型の触覚微分器について考察した.得られた主な研究実績を以下にまとめる.はじめに,入力飽和を防止するための条件を接触力,ゲインの関数として導出した.またループ系の安定性を保証するための条件を導出した.ここで,接触力の大きさがループの安定性を支配することをはじめて明らかにした.さらに,シミュレーションによりこれらの条件が矛盾しないことを確認した.次に,簡単な実験モデルを構築し,これを用いて上記二つの条件を実験的に確認した.さらに,ループに補償器を導入することにより安定性の向上が図れることを理論的に示すとともに,実験的にその有効性を確認した.これにより入力飽和の問題と分解能低下の問題に対して明確な設計指針が出せた.
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