研究概要 |
Tracing型人工能動触角は,ウィスカ(ひげ),ウィスカを固定するためのひずみゲージ付アダプタ,それを動かすためのアクチュエータから構成され,ねじの有効長計測機器として実用化されている.この研究を進める過程で,ウィスカ先端がエッジ部を通過する際,あたかも形状を微分したかのようなスパイク信号が観測される.この現象は,ねじ形状を正確に計測するという観点からは好ましくないが、例えば刻印文字の認識のようなエッジだけがわかればよいというようなニーズに対しては,センサのハードウェア自体が有する微分効果を逆に有効利用できるという利点を持つ.本研究では,以上のようなエッジ強調のニーズがあることを踏まえた上で,交差角αの2表面をなぞる際,特別な処理を施さなくてもあたかもエッジ部を微分したかのような信号が得られる触角センサ(本研究では特に触角微分器と呼ぶ)を新たに提案した.提案した触角微分器は,高感度センサ素子とセンサ機能をもたないウィスカの組合せによって構成され,しかもセンサのロバスト性を確保する観点からセンサ素子は直接環境には接触しない間接接触方式を前提としている.本研究では,エッジ部を通過した瞬間にセンサ出力がどのくらい増幅されるかを表す指標としてエッジ強調係数Fを導入した.さらにどのようなセンサ設計に対して微分効果が増幅されるかについて,設計指針を導出した.この設計指針に基づいてセンサシステムを試作し,アイデアの実験的検証を行った.その結果,フィルタ処理を行わなくてもエッジ部が強調された信号を直接得ることができるので,エッジの所在を知る上で極めて有効に利用できることを確認できた.
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