研究概要 |
PTC(Positive Temperature Coefficient)素子は,携帯電話やノートパソコン、ビデオカメラに代表される小型電子機器の二次電池の保護素子として用いられている。現在使用されているPTC素子は、限流後の過電圧に対しての耐電圧向上、材料の最適組成条件、電極材料や形状の選定など、多くの検討課題がある。 本研究では、上記した課題解明の前段階として、PTC素子の基礎的な知見を得るために、外部加熱および自己発熱方式によるPTC素子特性、および外部加熱後の部分放電特性について検討を試みた。 本実験ではポリマー系、チタン酸バリウム系、セラミック系PTC素子を試料として用いた。最初に,各種PTC素子の外部加熱による抵抗-温度特性、自己発熱による限流波形測定およびエネルギー評価のための測定回路システムを構築した。3種類のPTC素子の外部加熱による抵抗-温度測定の結果より、ジャンプ温度およびその時の抵抗値、最高到達抵抗値を比較した。その結果、(1)ポリマー系ではサイズの大小にかかわらず70℃付近で抵抗が急激に増加した。しかし最高到達抵抗値は絶縁距離が長くサイズの大きい素子の方が大きい。(2)チタン酸バリウム系は常温から緩やかに抵抗上昇し、最高到達抵抗値を境に負温度係数(NTC)領域に入る。(3)セラミック系は温度上昇携帯はポリマー系同様ある温度で急激に増加した。 自己発熱方式による限流波形測定およびエネルギー評価より、初期抵抗の大きいチタン酸バリウム系は限流開始までの時間が短いことが分かった。また流入電流が少ないほど限流開始までの流入エネルギーが小さいことが分かった。 ジャンプ後の抵抗復帰評価よりチタン酸バリウム系は10回ジャンプ動作を行っても、ほぼ初期抵抗地と変わらない値を示したが、セラミック系では平均1.5倍、ポリマー系では最大5倍程度の抵抗上昇が見られた。これはマトリックスである高分子材料が組成変化したためと考えられる。 最後に、ポリマー系、チタン酸バリウム系PTC素子の部分放電取得を試みたが、内部放電が発生する前に素子のエッジ部分で絶縁破壊が生じたり、電界依存性のために電圧を印加できないといった問題から部分放電特性は観測されなかった。
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