研究概要 |
経済分野など信頼性が最も重要な領域にまでインターネットが普及するのに伴い,通信の信頼性を高めることが大きな課題となりつつある。その最有力な方法が量子暗号通信である。量子暗号の特徴は,光子一つ一つに偏光情報などをのせると光子一粒だけの測定では不確定性原理により情報を読みとれないことを利用することであり,暗号化する乱数表を盗聴されることなく送受信者が共有できる。このためには,光パルスあたりの光子数を確実に1以下にする必要がある。このような問題点を解決し高速の単一光子源を実現するには,微小共振器により真空場のモード数を低減するとともに共振器内にただ一つの量子ドットを埋め込み,量子ドットの基底状態に関与した励起子を一つの共振モードに強く結合させ,単一光子を発生させることが有力である。 当該研究では,単一光子源を実現するためにピラミッド共振器を提案し,ピラミッド内部における共振モードの電磁界分布を時間領域差分法(FDTD)によって解析を進め,共振Q値の理論的検討とそのさらなる増大の検討を進めた。さらにピラミッド微小共振器内部にCdS発光層を導入し,その発光スペクトルが共振モードによって強く変調されていること,その発光ピーク位置は温度によって変化しない共振器特有の安定性を示すことを明らかにした。またこの発光ピーク位置は反射測定で観測された共鳴吸収ピークとよく一致することからも,共振モードによる発光の増大であることを確認した。単一光子を発生するには単一量子ドットなどの発光準位を準備する必要があるが,ZhCdS混晶のポテンシャル揺らぎによって生じた局在準位を少数取り出すことにも成功した。
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