研究概要 |
超清浄雰囲気スパッタ法で熱酸化膜付きSi基板ならびにMgO{001}単結晶基板上へSub./U.L./Mn-Ir/Co-Fe積層膜を作製しその交換磁気異方性について検討を行った。積層膜の単結晶化を意図し、MgO上への成長には基板とMn-Irの格子定数を考慮し、下地層(U.L.)として種々の合金単層膜ならびに積層膜を用いた。下地層材料ならびに印加基板バイアス等の成膜条件を詳細に検討した結果、基板バイアス印加を行わずに形成したCu200Å単層膜下地層の場合にもっともMn-Ir(002)からの回折線強度が増大し、良好なエピタキシャル成長が実現されることが判った。熱酸化膜付きSi基板上に作成したMn-Ir/Co-Fe積層膜は、基板面に平行に(111)面が配向した膜面内無配向の多結晶膜となった。多結晶積層膜において強磁性Co-Fe層の組成を変化させた結果、300℃の熱処理後の積層膜の交換磁気異方性は、強磁性層組成依存性を示すことが明らかとなった。一方向異方性定数(J_K)は、Fe濃度30〜40at%付近において、0.5erg/cm^2を超える値を示した。また、熱処理温度を変化させた検討から、Mn-Ir層厚100Åの積層膜においては、J_Kの値は、熱処理温度400℃まで上昇し0.6erg/cm^2を超える値を示した。この値はこれまでに報告された積層膜の組み合わせすべてに比較して最も大きな値である。今後は、(110),(111)等結晶面配向の異なるエピタキシャル積層膜を作成し、多結晶積層膜の結果との比較から、交換磁気異方性に及ぼす結晶配向面影響等について検討を行う。
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