研究概要 |
標記の薄膜太陽電池の性能やその製作プロセスを改善するため、光吸収層およびバッファー層の製作条件が太陽電池の性能にどのような影響を及ぼすかについて研究し、つぎの結果を得た。 第一段階でMo被覆ガラス基板の上にまずCuGaS_2薄膜を作成した。ここで、Cu/Ga比は1.0とした。さらに第二段階で金属InおよびCuからなる前駆体を使用してその硫化によりCu(In,Ga)S_2光吸収層を製作した。Cu/In比は1.3から2.3まで変化させた。Cu/In比が1.7以上であるとき、短絡電流密度の大きい太陽電池が得られた。これは硫化銅の量子ドットの形成に基づいていると考えられる。Cu/In比を1.7-2.1にしたとき、変換効率が11%までの薄膜太陽電池を実現した。 高融点のGaS、金属InおよびCuからなる前駆体を使用して、その硫化によりCu(In,Ga)S_2光吸収層を製作した。GaSの膜厚を40nm、Cu/In比を1.2としたとき、変換効率11%の太陽電池が得られた。しかし、この最適条件からずれると太陽電池の性能は劣化した。 光吸収層の基板への密着性の向上が光吸収層へのAlの添加によって改善された。前駆体層におけるCu/(In+Al)比は2.7まで高くしても硫化後に膜は剥がれなかった。また、第一層としてCuAlS_2薄層を使用することによって密着性は改善された。ここで、硫化は真空封止の石英管中で行った。CuAlS_2薄膜の伝導型はp型、抵抗率は60Ω・cm以上 禁制帯は3.5eVであった。 バッファー層として、有害なCdS薄膜に替えて(Zn,In)((O,OH,S)系薄膜をまずZnI_2,InI_3,CH_3CNSH_2,NH_4Iの水溶液からCBD法によって堆積した。ZnI_2/InI_3比を0.1から10まで変化させたとき、得られたバッファー層におけるZn組成は1%程度の低い値を示した。しかし、膜の底部でのZn/In比は膜中より数倍高い値を示した。溶液中のZnI_2/InI_3比を1としたとき、薄膜太陽電池の効率として6.0%を得た。さらに上記沃化物に替えて塩化物を出発原料とする水溶液から上記のバッファー層を成長させた。このバッファー層を堆積する前にZnおよびCdのよう化物を含む溶液でCuInS_2薄膜の表面を処理することによって、太陽電池の効率がそれぞれ6.4および8.2%まで効率が向上した。これらの処理は、太陽電池のスペクトル光応答において、その短波長領域の量子効率を増加させた。
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