研究概要 |
ビスマス系やタリウム系に代表される異方性の強い銅酸化物高温超伝導体は、超伝導性のCuO_2格子面と絶縁的なBiO格子面が交互に積層した結晶構造を持っており,これらの積層格子面に垂直な方向の電流輸送特性が超伝導CuO_2面同士のジョセフソン弱接合によって支配される固有ジョセフソン効果と呼ばれる現象が発現する。固有ジョセフソン効果を利用した単結晶接合デバイスは、高温超伝導体の持つ大きなエネルギーギャップを有効に利用できることから、テラヘルツ帯でも動作が可能な高速デバイスへの応用が期待される。16年度は,LPE成長させたBi_2Sr_2CaCu_2O_8単結晶薄膜上に作製した固有ジョセフソン接合(IJJ)素子におけるジョセフソン・ボルテクスとマイクロ波・ミリ波との相互作用に着目しながら接合特性を精密に測定するとともに,結合サイン・ゴルドン方程式を用いた数値計算と接合特性とを比較して,高周波応答特性を詳細に評価した結果、次のような知見を得た。 (1)高周波磁場によって周期的に導入されたジョセフソンボルテックスが接合内を高周波に同期して伝播するためには高周波が接合内を伝播する必要があり,それが実現したときにジョセフソン関係式を満たす電圧に明瞭なゼロ交差電流ステップが得られる。 (2)ジョセフソンボルテックスの運動方向に沿って周期的に導入したピンニングポテンシャルが多数のジョセフソン接合にわたってボルテックスを同期させる効果がある。 これらの知見は,固有ジョセフソン接合におけるジョセフソンボルテックスの運動を利用することによってテラヘルツ帯におよぶ高い周波数の電磁波の増幅や発振ができる可能性を強く示唆している。
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