研究概要 |
Fe-Ptナノ粒子集積膜の作製手法とその記録媒体としての実用的観点からの磁気特性評価を行なった.Fe-Ptナノ粒子は白金アセチルアセトナートのポリオール還元と鉄ペンタカルボニルの熱分解との複合反応により作製し,集積膜はラングミュア・ブロジェット(LB)法により作製した. LB法では界面活性剤に覆われ表面が疎水性であるナノ粒子を水面上に滴下すると,粒子が凝集した集積膜が生成しやすいが,両親媒性分子を混合することによりナノ粒子と水との間の表面エネルギーを低下させ,マイクロメートルレベルの範囲で単層の粒子配列膜を得ることができた.粒子配列膜を得る条件として,1)混合する分子が飽和脂肪酸分子であること,2)用いる溶媒として蒸発時間が比較的短いクロロホルムであることがあげられる.その条件下で最適な粒子濃度と,粒子・分子比率とを見出した. 上記の手法で作製した単層のナノ粒子膜を熱処理することにより粒子の構造を規則化させるが,それに伴う粒子の焼結を抑制するために,カーボン膜をスパッタ法により堆積した.熱処理温度が600℃程度では十分な焼結抑制効果が得られ,保磁力も4kOeまで向上した.ただし,粒子の磁化容易軸を配向させることはできなかった.しかし,膜面内方向,垂直方向に磁場を印加したときの磁気ヒステリシス曲線はほぼ同じで,磁気的振る舞いは粒子的であることが示唆された.さらにこの粒子膜の磁気緩和特性を評価することにより,磁化反転の単位を見積もる活性化体積を求めたところ,粒子の実体積とおおよそ一致することがわかった.このことは粒子1つ1つが磁気的に独立して磁化回転により反転していることを示している.この磁化反転モードは媒体のノイズ抑制と分解能の向上に寄与すると推測される.
|