研究概要 |
高速信号伝送回路中では,CMOSスタティック論理素子に加え,電流モード論理素子が広く使用される.電流モード論理素子は,CMOSスタティック論理素子と比較して高速動作が可能な反面,設計パラメータが多く消費電力が大きい.電流モード論理素子を使用する場合は,各設計パラメータを系統的に決定し,かつ必要最小限の部分にのみ使用することが望まれる.高速分周器の設計パラメータの設定は,通常回路シミュレーションによる過渡解析を繰り返して行なわれる.分周器の開ループ伝達関数の単位利得周波数と最大動作周波数との相関性に着目し,小信号解析を利用して最適パラメータを算出する手法を提案した.実測値との比較から,レイアウトに依存して生じる寄生容量の重要性を示し,寄生容量を考慮することにより,実チップ上での動作に近い状態で最適パラメータを算出することが可能となった.次に,高速分周器を用いた信号多重化回路の設計法の検討,及び実測での動作確認を行った.信号多重化回路は,電流モード論理素子を使用する段数によって,回路性能が大きく変化する.各要素回路の特性評価に基づき,最大スループット,消費エネルギー,レイテンシの間のトレードオフを算出する.トレードオフ解析に基づき,要求される伝送速度に応じた最適な構成を選択する方法について述べる.信号多重化回路を設計,試作,評価し,シミュレーション結果とほぼ一致した測定結果が得られた.電流モード論理素子を用いてチップ内信号伝送を行なった場合の,最大伝送速度,伝送効率について評価する.ドライバ/レシーバの設計指針について示し,シミュレーション及び実測での動作を確認した.信号多重化回路の構成による最大伝送速度,伝送エネルギーの変化について評価した.本設計技術を利用することにより,電流モード論理素子を用いた回路の系統的設計が可能となり,実チップ上においても所望の性能が得られた.
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