研究概要 |
本研究の目標たる光モジュレータは、シリコン中自由電子による赤外光の吸収を利用する新しい挑戦的な試みである。実現の要は、光と相互作用する自由電子の量をいかに確保するかというもので、このため櫛形MOSトランジスタによる光モジュレータの試作とその評価を行った。 最初の櫛形トランジスタによる光スイッチ実現の試みは、(1)入射した直径10μmの平行赤外光(波長,λ=1.55μm)は高さ1μm、長さ1mmの櫛形Siビーム中に留まらず、基板のSi中に抜ける、(2)櫛形Siの隙間に埋め込まれた不純物を10^<21>/cm^3程度含む多結晶Siが入射赤外光を強く吸収する、などの理由により光のスイッチ動作は確認できなかったが、(3)実効チャネル長2μm、高さ1μm、幅50nmのマルチSiビームMOSトランジスタが正常に動作し、同一平面面積のトランジスタの数倍以上の駆動電流が実現できた。ここに、新しいマルチチャネルMOSトランジスタ構造の提案ができた。 その後,上記(1)および(2)の課題の解決を意図したSOI (Silicon-On-Insulator)基板上Si光モジュレータを試作し評価した結果、(a)入射した波長1.55μmの赤外光は大部分透明なSi基板内を透過し,測定には有害な迷光となった。迷光強度はモジュレータ導波路を通過する赤外光の1000倍以上であることがわかった。このため,モジュレータ内を透過した光のゲート電圧による変化を確認できなかった。 この解決のため、Si基板に透過光を遮断する溝を形成し、波長1.55μmの赤外光を遮断するカーボンブラックを塗布した構造を試作し評価した結果、極めて有効な構造であることが確認できた。本研究期間内ではこの改良した構造での光モジュレータの試作はできなかったが、現在その試作・評価を継続している。
|