研究概要 |
既存のファイバ光通信網を用いた量子情報処理を実現するために必要な,波長1.5μm帯における量子もつれ合い光発生,ならびにファイバ伝送路をプラットホームにした量子状態操作の可能性について実験と理論モデルによる研究を行った。 (1)波長1.5μmにおける真空スクイージング光の発生 昨年度の研究から通常用いられている波長1.5μm光源であるErファイバ光源は光子数の過剰ノイズが顕著であり,この光源を用いた光子数スクイージングの発生は困難であることが明らかになった。そこで,本年度は,真空場直交位相スクイージングの発生実験を行った。偏光軸を90度ねじって融着したファイバ干渉計を用い,高輝度パルスと共に伝播する真空場を相互位相変調によって直交位相スクイージングし,平衡穂ホモダイン検出によって局所発振光を用いて光子数スクイージングに変換して計測した。その結果,最大-1.2dBのスクイージングが確認された。全く同じ実験系をもう1つ組むことで,2つの真空場直交位相スクイージング光から量子もつれ合い状態を発生させられることから,1.5μmパルスレーザによる真空場もつれあい状態の発生がほぼ出来たことになる。 (2)ソリトンパルスの周波数モード間量子相関 マイクロストラクチャーファイバにフェムト秒レーザを伝播させた際に,ファイバ非線形光学効果によって白色光が発生する。この超広帯域スペクトル内の周波数モード間に量子相関が形成され,負の量子相関の部分を摘出すると光子数スクイージングが発生する。我々は,誘導ラマン散乱によって発生したソリトンパルス的なストークス成分においてこの光子数スクイージングが発生することを実験から明らかにし,今年度はさらに理論モデルからその妥当性を検証した。また,ファイバ中をトラップし合って同時に伝播するパルスや,わずかな遅延差を持って伝播するパルス間にも量子相関が形成できることが明らかになった。光同士の相互作用の低さが光を用いた量子う情報処理の欠点であるが,ファイバをプラットホームにした量子状態の操作を示せた。
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