研究概要 |
近年,システムオンチップに関する研究が盛んになっており,高性能でかつ柔軟性に富むシステムとして,アナログ・ディジタル混載システムが注目されている.しかし,アナログ回路とディジタル回路とを同一チップ上に実現した場合,ディジタル回路の動作の決めるクロック信号などが基板を介してアナログ回路に混入し,アナログ回路の特性を劣化させるという問題がある.このアナログ回路に混入したクロック信号などはディジタル雑音と呼ばれており,従来は,ディジタル雑音を取り除くめに,アナログ回路を導体で囲む方法が取られていた.しかし,基板の深部からのディジタル雑音に関しては効果が低いことが知られていた. 本研究では,基板の深部からのディジタル雑音も取り除くため,ディジタル雑音を検知し,雑音と同じ大きさで位相が反転した信号を生成し,ディジタル雑音を打ち消す手法について検討を行った.まず,基板のモデリングについて検討し,低濃度基板では,混入するディジタル雑音の大きさが,アナログ回路とディジタル回路との距離にほぼ比例し,高濃度基板では,距離とは無関係であることを見いだした.この結果から,高濃度基板において,固定のディジタル雑音源を想定し,ディジタル雑音を打ち消すために最適な信号を生成するための増幅回路の利得を決定した.次に,主たるディジタル雑音源が時々刻々変化することを考慮し,増幅回路の利得を自動的に最適値に設定するための手法を提案し,ディジタル雑音の周波数が低い場合,極めて効果が高いことがわかった. 今後の課題として,周波数が高いディジタル雑音の打ち消し方法,レイアウトの工夫によるディジタル雑音打ち消し効果の向上,低濃度基板と高濃度基板の両方に用いることのできるディジタル雑音打ち消し方法などを検討していく必要がある.
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