超多重フォトニックネットワークのための光機能素子として、フォトニック結晶ファイバを用いた超広帯域波長変換回路の検討を当初に行った。しかし、フォトニック結晶ファイバは高い非線形性と自由度の高い波長分散制御が行える利点を有する反面、現行の技術では、両者を理想的に制御することは難しく、超多重フォトニックネットワークの目的に即した広帯域な波長帯で動作する波長変換回路を実現することは非常に困難であることを理論的かつ実験的に明らかにした。 そこで、別のアプローチとして、半導体光増幅器(SOA)の非線形性を利用した新しい超広帯域波長変換回路の検討を行った。従来のSOA型波長変換回路での動作波長帯はSOAの利得帯域によって大きく制約されていたが、新たに、利得波長帯の異なるSOAをカスケード接続させることで、より離れた波長帯まで変換可能な広帯域波長変換を提案し、実証実験を行った。その結果、これまで困難とされていた短波長側への広帯域波長変換において、波長範囲300nmを超える変位を有する広帯域波長変換を初めて実現することに成功した。また、カスケード接続型波長変換における相互利得変調での利得圧縮効果に着目することで、入力信号の振幅揺らぎを抑制可能な信号振幅再生効果を見出すことに成功した。さらに、提案された手法を波長変換の応用技術として知られる、単一波長の光信号を複数の異なる波長を有する光信号に変換するマルチキャスティングへの適用を試みた。これより、1.55μm帯の光信号を1.3μm帯の4波長の信号変換することに成功し、入力信号の振幅再生も行えることを確認した。 本研究で実証された波長変換回路は、我々が提唱する超多重フォトニックネットワークの通信波長帯をカバーするものであり、超広帯域波長変換回路に関しては、当初の目的を達成することに成功したと言える。
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