研究概要 |
本年度の研究は,IPネットワークによる音声・ビデオ伝送を対象として行われ,その実績は4種類に大別できる. まず,第1は,ユーザレベルQoS研究の準備としてのアプリケーションレベルQoS評価の研究である.DiffServのAFサービスにおいて,UDPとTCPのコンピュータデータフローによる干渉が,アプリケーションレベルQoSの一つである連続メディア同期品質にどのような影響を及ぼすかを実験により明らかにした.また,再送ベースのマルチキャスト方式MRVTRにおいて,メディア同期のためのバッファリング時間がアプリケーションレベルQoSに及ぼす影響も調査した. 第2は,アプリケーションレベルQoSの観点からの端末間同期の検討である.中規模のマルチキャストグループにライブ音声・ビデオを転送する場合を対象として,3種類の端末間同期方式を比較することで,各方式の特徴を明らかにした. 第3の研究は,ユーザレベルQoSとそれへのマッピングに関するものである.まず,心理学的測定法である一対比較法と比較判断の法則とを用いて,距離尺度となるユーザレベルQoSパラメータを評価する方法を提案した.更に,重回帰分析を用いて,測定により得られたアプリケーションレベルQoSパラメータ値からユーザレベルQoSパラメータ値を推定する方法も提案し,その有効性を示した.また,同様な方法で,コンテンツの違いがユーザレベルQoSに及ぼす影響についても調べた.更に,多次元的にユーザレベルQoSの評価するために,SD法を適用し,コンテンツの違いがユーザレベルQoSの劣化の仕方に影響を及ぼすことも示した.これらに加えて,ライブ伝送時のユーザレベルQoSの評価や,多次元尺度法によるユーザレベルQoSの多次元距離空間表現法も提案した. 第4は,序数尺度であるMOSを用いた相互補完性の研究である.アプリケーションレベルQoSとユーザレベルQoSのマッピング関係式によって,相互補完性を定式化した.そして,シミュレーションデータを用いて,音声とビデオが相互補完するアプリケーションレベルQoSパラメータ値の範囲を示した.
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