研究概要 |
本年度は,"マルチメディアQoS研究の現状と課題"と題する総括的な研究サーベイを行った他,次の4種類の研究成果を上げている. まず,第1に,ユーザレベルQoS研究の準備として,音声・ビデオ伝送のアプリケーションレベルQoS評価の研究を行った.DiffServのAFサービスを用いてwebアクセスと音声・ビデオ伝送サービスを実現する際のAFCP値の影響の評価,WFQスケジューラのネットワーク内の配置の影響,IEEE802.11eMACプロトコルの影響などを定量的に調査した. 第2は,ライブ音声・ビデオをマルチキャスト伝送する場合に,端末間同期品質に焦点を合わせたアプリケーションレベルQoSを評価したものである.3種類の端末間同期方式を対象として,有線網と無線アドホックネットワークの両方で3方式を比較し,各方式の特徴を明らかにした. 第3は,距離尺度となるQoSパラメータを用いたユーザレベルQoSの研究である.まず,順序尺度であるMOSと2種類の心理学的測定法によって求めた距離尺度との精度を比較した.また,距離尺度の原点となる基準値を,極限法を利用して求める方法を提案した.更に,ライブメディア伝送における作業の種類や,画像表示サイズの違いが,ユーザレベルQoSに及ぼす影響についても検討した. 第4は,音声とビデオの相互補完性の研究である.昨年度はMOSを用いて相互補完性を調べたが,本年度は,心理学的測定法の一つであるカテゴリー判断の法則をMOSに適用して距離尺度に変換し,ユーザレベルQoSパラメータを求めた.主成分分析と重回帰分析により,アプリケーションレベルQoSパラメータとのマッピング式を導出し,音声とビデオ間の相互補完性を定量的に調べた.更に,この相互補完性を用いて,与えられたネットワーク平均負荷量に対して,最高のユーザレベルQoSを達成するビデオの送出フレームレートが存在することを示した.
|