情報基盤整備に伴い、安価に光ファイバを埋設することが大きな社会的需要となっている。特に末端需要者への配線が最も大きな課題であり、地下を水平に掘り進む水平ドリリング工法が有望視されている。しかしわが国においては、都市部における人工雑音の影響で正確なドリルヘッドの位置決定が行えず、この工法の普及の障害となっている。 本研究では、高電磁雑音環境のもとで光ファイバを正確に埋設するため、地下掘削機のドリルヘッドから送信する位置決定のための信号を、外部電磁雑音に対して適応的に変化させ、高精度の位置決定を可能とする手法を開発・実用化することを目的とする。 初年度となる本年度は、主に以下の分野の技術の開発・検討を行った。 (1)適応的雑音除去アルゴリズムの開発(佐藤) 雑音の特性および地下への伝搬を考慮して、信号を多数の直交する帯域に分散し、各帯域での信号対雑音比により動的に情報量を割り当てる適応的変調方式を開発し、これにより地上のセンサーでの検出能力を向上させることに成功した。初年度は予備調査で得られたデータに基づき数値シミュレーションを行い、最適化を行った。さらに、通信速度、中心周波数、帯域幅、周波数利用効率などの基本的通信諸元を決定するため、これらのパラメータを変数として多次元最適化の手法により最適値を定めた。 (2)数値シミュレーションによる雑音信号の地中伝搬特性解析(笠原) 本研究では、ドリルヘッド内で雑音を検出し、適応的に送信信号の変調方式を変更するので、地表と地下で受信される信号の関係を知る必要がある。特に道路地下は媒質の不均一性が強いので、これを想定した環境下での電磁波の伝搬をレイトレーシングの手法により解析し、地下で受信される信号の特性を評価し、現実的な疑似データを生成する環境を整備した。
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