研究概要 |
最終年度にあたる16年度は,昨年度までに実施した知的エージェントの自律性と協調性の獲得機構を,さらに動的環境化で利用できるよう拡張をはかり,本研究課題の目標であった知的エージェント集団による実環境での知的創発機構の実現をはかった。具体的には,以下の3つの点について成果をあげた。 (1)動的環境化における知的エージェント自律システムの発展 知的車椅子の「自律」機能について,様々な外乱のある環境化でも安定した障害物回避を行うことをめざし,隠れマルコフモデル(HMM)を自律行動制御に利用することを提案した。動作コンテクストをモデル化しておくことで,外乱による行動伸縮にロバストな制御が可能になる。様々な環境でのシミュレーションと実機による実験の結果,所望の動作が確認されたことから,実環境での実用性が評価できた。 (2)動的環境化における知的エージェント協議システムの発展 本研究の中心となる群内での協調行動獲得について,より深い検討を行った。フラストレーションコストと呼ぶ大域環境情報を媒介として,集団が情報をやり取りするstigmergyの応用をはかった。遺伝的プログラミング(GP)と強化学習(RL)の比較を行った結果,非マルコフ過程のである実環境上では,集団行動を獲得する上でGPが有利であることを確認した。 (3)基礎技術の発展的応用 一連の研究成果から生まれた新たな技術,手法をもとに交通の効率化をめざす発展的な応用研究に着手した。特にマルチカーエレベータ制御における群知能の創発応用について成果を上げた。 以上3点の取り組みから,今年度は雑誌論文2件,国際会議・シンポジウム2件,講演発表7件の成果を上げることができた。
|