研究概要 |
様々な工学的問題の解決過程における人間のもつ発想と包括的能力を数理化・計算機化することを目的とし,(1)人間-コンピュータ間の情報の流れを記述し得る「インタラクティブ情報場」の数理構造の解明およびこれに密接する抽象的設計論の確立,(2)学習を通じての創発的設計論(環境が未知の場合の問題への強化学習の適用),(3)インタラクションを通じての創発的設計論(仕様があいまいな場合の問題への進化的計算の適用)をテーマとして研究を進めてきた.特に,本年度は,昨年の(1)および(2)の研究をさらに進めるとともに,(3)についても研究を行った. まず,(1)に関して,チャンネル理論の上でクラシファイア・システムの数学的形式化を与えることで,学習を環境からの情報の獲得としてではなく環境との間のインターフェースの変化として考える見方の可能性を示し,インタラクティブ情報場を情報の流れを促すチャンネルと見て形式化した.抽象的設計論については,設計において重要な役割を持つ発見的推論に関連して,帰納的推論,発見的推論,設計といった3種類の推論の関係を明らかにする非演繹的推論の数学的形式化を与えた. (2)については,特に,環境が人間を含む場合における強化学習法に関する研究を行った.獲得した報酬に応じて行動の生起確率を変化させるという従来の強化学習法に加えて,報酬に応じて状態そのものを適応的に推定する手法を提案した.ロボット・ナビゲーション問題に対する計算機実験などにより,環境の特徴に応じた状態空間が適応的に構成され,速やかに学習できることが示された. さらに,(3)に関して,特に,人間の曖昧な判断を利用できるような進化的計算手法に関する研究を行った.解候補から遺伝子への写像を自動的に求める共進化型の進化的計算手法および性淘汰の概念を遺伝的アルゴリズムに導入した計算モデルを提案し,その従来手法に対する優位性を計算機実験によって示した.
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