本研究は位相検出により高周波キャリア型薄膜磁界センサ(GMIセンサとも呼ばれる)の高感度化をはかったものである。高周波キャリア型磁界センサは磁性薄膜に高周波電流を通電しながら、磁性薄膜の透磁率変化を表皮効果を利用してインピーダンス変化として検出するものである。本研究ではこのキャリア電流の位相角が測定磁界によって大きく変化することに着目して、高感度磁界計測をはかったものである。 (1)まずセンサの出力信号であるキャリア電流の振幅および位相差が磁界により大きく変化することを意図したキャリアサプレス回路を構成した。この回路を用い、センサ素子自身の位相変化率として5度/1 Oe程度の素子を用いて位相変化を測定した。その結果実測された位相変化率は最大で3000度以上に及んだが、一方で位相変化率が大きすぎると、測定の安定性と再現性が悪化することが確認された。この観点から安定性および再現性と高い位相変化率を両立できる最適条件を求めたところ、安定に計測可能な位相変化率として約450度/Oe程度を達成した。 (2)位相差を時間差として計測することにより高感度計測が可能である点に着目して、DMTD(Dual Mixer Time Difference)法を用いて高感度化をはかった。DMTD法はセンサからの出力信号と同一周波数のリファレンス信号をともにミキサによりダウンコンバートし、タイムインターバルカウンタによりセンサの出力信号とリファレンス信号との時間差を計測するものである。測定する磁界が変化すると測定される時間差が変化するため、ここから磁界を高感度に計測可能である。申請者のグループでは位相分解能として世界最高精度である10^<-5>degree/Hz^<1/2>程度の位相検出分解能を達成した。このときのジッタは使用したタイムインターバルカウンタの分解能である約25psecまで低減できた。磁界検出分解能としては約6×10^<-6>/Hz^<1/2>を得た。
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