われわれは歩行障害を器質的な問題としてだけ扱うのではなく、環境と身体の相互作用における時間-空間的な運動パターンの創出の問題として捉えてきた。そして、制御する側とされる側を区別するマスタ・スレーブ形式に基づく従来の介助手法を問題とし、共創型歩行介助システムとしてのWalk-Mateを提案してきた。しかし、実際の歩行障害に対しては、まだ体系的な調査が実施されていないという問題が残されていた。そこで本研究では、Walk-Mateを歩行障害者に適用し、その介助やリハビリにおける有効性を調べることを目標としている。 本研究では計画どおり平成14年度にWalk-Mateの高齢者用モデルを構築することに成功し、平成15年度には新型Walk-Mateを用いて有効性を体系的に評価することに着手した。そして、その成果が本年度(平成16年度)得られたので報告する。具体的には、歩行障害を評価するための指標の作成と、それを用いたWalk-Mateの有効性評価に関する成果である。なお、歩行障害は筋骨格系障害と脳神経系障害に分類することができるが、本年度は筋骨格系障害の一つである股関節障害について集中的にデータを取得し解析した。 前者においては、歩行障害をダイナミカル疾患と捉えることで、動的システムの概念に基づいて歩行障害の評価指標を作成した。特に、加速度センサーを用いて腰部重心の軌道を計測することで、歩行運動の軌道安定性や空間・時間非対称性を計算し、実際の歩行運動の障害との関連を明らかにすることができた。後者においては、上記の指標を用いてWalk-Mate使用による歩容の改善を評価した。50人の患者において体系的に調査し、有効性を統計的にも確認した。その結果、股関節の人工関節への置換手術後の回復期における歩行リハビリへの有効性が示された。
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