研究概要 |
【1】環境(対象物)・道具・身体(感覚・運動機構)間の動的関係獲得 本研究では,「脳内には,重なり合ったダイナミクスを分離できる機構が存在する」という仮説のもと,複数の動的環境下でその一部を独自の内部モデルとして獲得できるかどうかを実験的に検証した.この結果,二つの異なるダイナミクス(進行方向の速度に比例して手先に力が働く粘性力場と位置に比例して力が働く位置依存の力場)を重ね合わせて発生させ,重なり合ったダイナミクスの一方をあらかじめ学習させることで,他方のダイナミクスの情報を単独のダイナミクスとして認識できることを到達運動実験により確認した.道具により拡大された身体によって外部環境がとらえ直され、内面化されるプロセスを解析する手がかりを得るとともに、道具使用による身体ダイナミクスの再構成に関する適応モデルを構築するための重要な基盤を得ることができた. 【2】動的関係に基づく内部ダイナミクスの形成と身体運動パターン生成 未経験の粘性力場における上肢到達運動学習について研究を進めた.今年度は、手先変位・速度に比例した大きさの外力が運動方向と直交する方向に加わる等,日常では経験することのない力場環境を複数種用意し,各環境で到達運動を繰り返し学習させた.その際環境の提示順序を入れ替えたり,2種類の環境を重ね合わせた環境で学習させるなどすることで,学習によって被験者が獲得した感覚運動連関の内部表現の汎化特性について考察を行った.また,到達運動中の手先剛性,筋活性の計測も行い,環境変化を予測して適応的に戦略を変更していることなどを示唆する結果を得た.
|