研究概要 |
本研究は,局部破壊領域の応答を要素実験から得て,それ以外の領域は構成則と連携させた有限要素を使用する方法を開発しようとするものである.最終的には情報技術を応用する事で,実験によって代表させた領域での局所変形と力の関係に関する情報をそのまま構成則開発の検証データとする事を目標とした. 本研究で想定されている実験はあくまで要素試験であり,得られる情報は要素の統計的な挙動に過ぎない.しかし,実現象を予測するためには個々の不確定な挙動を有する部材の集合体であ構造物の挙動を予測する必要がある.そこで本年度は他の要素試験の開発と平行し,材料の不確定性のみならず,複雑なRC構造物を容易にモデル化する事を可能にする事を目的に,エレメントフリーガラーキン法を摂動展開及びPC展開を用いて拡張した.開発された手法を様々な境界条件におけるモンテカルロシミュレーションの結果との比較により,その有効性及び効率性を示す事が出来た. 地中鉄筋コンクリート構造の接合部および隅角部に対して,自己質量調整型仮想材料モデルによって配筋を生成し,施工が可能で,しかも曲げせん断力を適切な裕度で伝達できる設計を実際に提示した.欧州で従来から用いられてきたstruct-tieモデルとの最大の違いは,寸法効果を配筋設計に直接的に取り入れることができる点にある.本研究成果の特質はせん断破壊の寸法効果が顕著となる大型部材に対して特に有効であると考えられる. 地下構造物の隅角部のせん断破壊には,土圧条件と同時に寸法および鉄筋配置詳細が大きく関与していることも実験ならびに解析から明らかになった.寸法の違いによって施工性や使用可能な鋼材径が異なるため,破壊現象の詳細は相似ではない.この問題に対しても本研究を適用した結果,小型隅角部では開口方向の変形に対して角部内部にせん断破壊が生じるのに対し,実規模トンネル断面ではその危険性が格段に低下し,たとえ発生したとしてもそれ以後の応力伝達機構は阻害されないことが,実験ならびに解析で示すことができた.
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