研究概要 |
風力発電導入する際には,建設地点の風況を事前に把握することが重要である。現在全国をカバーする風況マップは数10kmに1点の気象官署の風観測データから内挿して作られたものであるために,局所地形の影響を反映しておらず,詳細風況として使うことができない。そのため,現状では風観測による風況精査は1年間以上の時間を要し,全体の開発時間の半分以上に占めている。迅速な風況精査手法の確立が急務と言える。本研究ではまず地域気象モデルを利用した新しい風況精査手法(DSD法,Dynamical Statistical Downscaling)を提案する。そして,実測データを用いて本手法の予測精度を検証し,従来1年間かかった風況精査を2週間に短縮することに成功した。 具体的は,まず全球モデルの客観解析結果および広域地形と土地利用データを地域気象モデルに与え,1年間のリアルタイムの解析から風・気温などの気象要素の時系列データを求める。そして,統計解析により対象地域の風況を求める。最後に,この地域風況データならびに建設地点における局所地形と土地利用データを用いて,非線形風況予測モデルにより,建設地点での詳細風況を求める。また建設地点の詳細風況を求めるためには,まず気象モデルから得られた地域風況を上流側の平坦地に変換し,標準風況を作成し,次に,作成された標準風況を元に細かい地形の影響を受ける建設地点での詳細風況を求める。このような変換過程はIRA法(Idealizing and Realizing Approach)と呼ぶ。 気象モデルによる地域風況予測の精度を検証するために,竜飛崎灯台で得られた風観測データと比較した。気象モデルのみでは建設地点の詳細風況を予測することができず,年平均風速の予測誤差は25.4%にも達している。それに対して,IRA法による風速の予測結果は気象モデルのみによる予測結果に比べ,予測誤差が大きく低減され,3.5%となっていることが分かった。同様の手法を用いて竜飛岬にある東北電力が所要する竜飛ウィンドパークにおける詳細風況を予測し,観測データとも比較した。本研究で提案したIRA法により求められた年平均風速の予測誤差が気象モデルのみの場合に比べその予測誤差が1/3以下となった。
|