研究概要 |
2010年に向けて我が国が300万KWという風力発電の開発目標を掲げているが,これを実現するためには,技術的な側面からの支援が不可欠である.中でも風力発電量の予測は最も重要である.現在風力発電は,出力が風に応じて変動するため,電気系統に与える負荷が大きく,わが国の風力開発を遅らせる原因にもなっている.そこで,1時間から数日先の風力発電量を時系列的に精度よく予測することができれば,風力発電の電源としての価値が高まると同時に,電気系統に与える負荷を制御することも可能となる. 本研究では,地域気象モデルを発展させ,更に微細な地形効果を考慮できる局地風況シミュレータとを統合させることにより,任意地点における局地風況及び風力発電量のリアルタイムの予測システムを構築したと共に,それを実現するための力学統計的局所化(DSD : Dynamical Statistical Downscaling)及び標準実風況変換(IRA : Idealizing and Realizing Approach)と呼ばれる新しい風況予測手法を提案した. 具体的にはまず全球モデルの計算結果を初期条件ならびに境界条件として地域気象モデルをその内側に順次ネスティングさせ,風の時系列計算を行う.最も内側の計算グリッドは格子間隔を1〜2km程度とする.次に気象モデルで用いた1〜2km程度の解像度を持つ粗い地形と粗度を用い,MASCOTによる風況シミュレーションを行い,地域風況から仮想領域の風況への変換を行う.最後に,10m〜50m程度の解像度を持つ細かい地形と地表面粗度を用いた風況シミュレーションを行い,仮想領域の風況から対象地点での実風況へと変換する.これにより,大気安定度の影響及び微細な地形の影響を同時に考慮することが可能になると共に,計算時間の大幅な短縮を実現した. 本手法の有効性は竜飛ウィンドパークにて検証され,予測された風速と各風車のナセル上の実測値はよく一致した.年平均風速の予測誤差は約8%となり,従来手法の予測誤差の約3分の1以下になっていることが分かった.
|