研究概要 |
最新のテクノロジーを利用した斬新な固体地球計測手法である精密制御震源を用いた調和波動地震トモグラフィの地下展開フェイズドアレイの性能実証研究を進めた。本研究に先行する科学研究費の補助により,これまで精密制御震源システムの製作と試験を進めてきた。また,本研究課題の平成14年度予算により,フェイズドアレイ方式には欠かせない偏心質量の1次モーメント可変式の震源(やよい3号)を作製した.また,光ケーブル網の敷設により,震源と観測点を同期した観測実験ができるようにし,やよい2号の性能試験をした. 平成15年度では,本来はフェイズドアレイを展開して実証試験を行う予定であったが,現場において電源を確保できる目処が立たないため,震源の設置は再検討することとし,既設の震源(やよい2号)を用いたトモグラフィ実証試験を進めると伴に,観測設備の拡充および新型震源(やよい3号)の検証などを行った.内容を以下に列挙する. (1)平成14年度までに震源から直線で300mと1kmのところまで光ケーブルを敷設していたが,この端点にボアホール型の地震計を設置した.また常時微動を計測し,ACROSS実験を行うのに十分に低いノイズレベルであることを確認した. (2)光ケーブル通信を介した同期観測により,既設の震源(やよい2号)の応答を遠方の観測アレイにより観測した.観測波形を解析したところ,時系列波形ではノイズに埋もれて全く信号が見えないにもかかわらず,解析によりACROSS信号が精度よく観測されることを確認した.また,スタッキングにより,理論通りにS/N比が改善することを確認した. (3)ACROSSの最大の目的である地盤の状態変化に伴う観測波形の変動の検出を実証するため,震源の時間安定性を評価し,また遠方の観測点にて観測波形の変化を捉える実験を行った.震源の安定性が十分に高いことは確認できたが,観測時間が12時間と短かったため遠方の観測点において明瞭な変化を検出するには至らなかった. (4)複数の周波数成分を観測して,狭帯域で離散的な周波数応答関数を取得した.これの解析を行ったところ,P波の直達波と思われる成分を検出することに成功した.ただし,反射波やS波と思われる波成分については,精度よく検出するには至っていない.さらなるデータ取得,解析が必要である. (5)製作したやよい3号を実験室にて機械的に駆動できることを確認した.これにより,偏心質量の1次モーメントを可変となり,フェイズドアレイを効果的に運用できる手法の見通しがたった.
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