研究概要 |
本研究課題に先立って昨年度に新しい風洞を製作し設置している.この風洞は4つのファンをそれぞれACサーボモータで駆動する吹き出し式の風洞で,吹き出し口は40cm×40cmの正方形である.コンピュータでACサーボモータに制御電圧変動を与えることにより急激な風速変動気流を生成できる.本研究課題の初年度に当たる本年度は,熱線流速計で気流の速度分布を効率よく測定するためのトラバース装置を製作した.このトラバース装置を利用して,この風洞が生成する気流の風速分布の基本的な特性を明らかにした.すなわち,(1)定常運転時の断面内の気流分布は,1%未満の偏差量であること,(2)制御電圧をステップ状に瞬時に変化させた場合および正弦波で変化させた場合のそれぞれについて,ほぼ目標とした気流変動が生成されていること,(3)自然風の乱流特性のモデルであるカルマンスペクトルに従う気流変動を生成し,所定のパワースペクトル特性を有する変動気流が生成できていること,である.さらに,正方形断面角柱に本風洞で生成した急激な風速変動気流を作用させて,本年度に購入した3分力天秤で非定常空気力を測定した.風速をステップ状に上昇あるいは下降させたときに角柱に作用する抗力および揚力を測定した結果,これらの空気力は,変動風速の瞬時値の2乗に比例する成分と変動風速の時間微分に比例する成分とに分離することができることが明らかになった.非定常空気力をこの2つの成分に分離する表現は,中央値がゼロの脈動流による非定常空気力に対しては従来からモリソン公式として知られていたが,本研究によって,より一般的な風速変動においても成立することが確認できた.
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